東大文学部の読書感想文

東大文学部。好きな本や最近読んだ本の感想を書きます。ニュースや本屋で目にした、本にまつわる気になる事も。

2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧

高林さわ『バイリンガル』の感想文

高林さわ『バイリンガル』 僕は、これまで読書感想文を書くにあたって、 紹介する本についてネガティブな表現は控えるようにしてきました。 未読の人にとっては、この先の素晴らしい読書体験の阻害になるし、 読んで面白かった!と思っている人にとっては、…

五木寛之『親鸞』の感想文

五木寛之『親鸞』 古い時代の話で、しかも、宗教がテーマ。 読みにくい小説オーラが立ち込める本書。 しかし、意外なことに、読んでみるとスラスラ読める。 月並みに表現だが、読みやすくて面白い。 五木寛之の『親鸞』という小説は、もちろん実在の人物・親…

図書館タクシー

車内で本の朗読が聴ける。 そんな「図書館タクシー」なるものが、 今日から11月11日まで、都内を走るらしい。 日本交通と、 本の朗読音声の配信サービス「オーディオブック」のオトバンクが、 読書週間に合わせて共同で企画したらしい。 タクシーに乗ったら…

「速読できるの??」

「趣味はなに?」 「読書かな。休みの日はよく本を読んでるよ」 「そうなんだ。じゃあ、速読できるの??」 「三大・本好きがされる質問」の一つがコレ。 速読できるの?? である。 残りの二つは、 自分で小説書かないの? と、 漫画は読まないの? である…

川村元気『億男』の感想文

川村元気『億男』 弟の借金を肩代わりし、昼夜問わず働いて、「お金の問題」で妻と娘とも別居中。 そんな一男が、宝くじで三億円を当てる。 急に大金が降ってきたことで一男は不安になり、 大学時代の落研仲間で親友の九十九に会いに行く。 実は、九十九は大…

梅田悟司『「言葉にできる」は武器になる。』の感想文

梅田悟司『「言葉にできる」は武器になる。』 突然ですが、問題です。 「バイトするなら、タウンワーク。」 これ何のキャッチコピーか分かりますか? ごめんなさい。 馬鹿にしているわけじゃないんです。 これほど明快なコピーもあまりないですよね。 一応、…

エッセイの魅力ー作家の素顔ー

今、エッセイが熱い?? 森下典子の『日々是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』が、 エッセイ作品としては始めて、文庫本の売上ランキングで1位になったそうだ。 茶道教室に通った25年間を綴ったこの作品は、10月13日に映画も公開された。 樹木希林…

辻村深月が「ドラえもん」を書く!?

「今年のドラえもんの映画の脚本、辻村深月らしいよ」 昼ご飯を食べていたときに、友人がふと口にした。 最初、小説家・辻村深月とアニメ・ドラえもんが結びつかず、困惑した。 本当かな?と半信半疑で調べてみると、ダ・ヴィンチニュースの記事を見つけた。…

早瀬耕『未必のマクベス』の感想文

早瀬耕『未必のマクベス』 『未必のマクベス』は奇跡の一冊だ。 無名の作家、早瀬耕。 元々、この作家を知っていたという読者は1%もいないだろう。 20年以上前に一度、SF小説を書いただけ。 『未必のマクベス』も刊行当初は全く売れていなかったそうだ。 た…

米澤穂信『王とサーカス』の感想文

米澤穂信『王とサーカス』 これまでに書いてきた、僕の感想文。 なんだか、少し古めの本が多いですね… そこで、たまには、今、本屋で売れている本を題材にしてみようかなと…。 今回は、米澤穂信の『王とサーカス』の感想文です。 先日も『氷菓』の感想を書い…

始めて読んだ本

「初めて」や「最初の」というのは、とにかく記憶に残る。 少年野球で初めてヒットを打った時の感触。 初めて一人で電車に乗って遠出した時のわくわく。 上京し大学に入って最初の友人。 そして、初めて読んだ小説。 僕が初めて読書をしたのは、 小学一年生…

原田マハ『総理大臣の夫』の感想文

原田マハ『総理大臣の夫』 原田マハが『月刊ジェイ・ノベル』(実業之日本社)に連載した本作。 先日、彼女の『暗幕のゲルニカ』を読んだ数日後のこと。 (原田マハ『暗幕のゲルニカ』の感想文も時間があったら読んでみてください。) arce.hatenablog.com …

歌野晶午『そして名探偵は生まれた』

歌野晶午『そして名探偵は生まれた』 僕は、「歌野晶午」というペンネームが大好きです。 美しいペンネームランキングを作るとしたら、間違いなく上位に入ります。 ウタノショウゴという響き、そして字面、すべてが完璧。 自分自身で名乗りたいぐらいです。 …

ジェイン・オースティン『高慢と偏見』の感想文

ジェイン・オースティン『高慢と偏見』 自分は、小山太一さんの訳による新潮文庫版で読んので、 正確には『自負と偏見』の感想文とすべきなのかもしれませんが… ここでは、一般的に耳なじみの深い『高慢と偏見』の邦題を採用したいと思います。 『高慢と偏見…

本屋が失われる街・渋谷

東大の1~2年生が通う駒場キャンパスは渋谷から二駅。 歩いても15分くらいの距離にある。 そのため、東大生の多くは渋谷という街になじみ深い。 僕も何かと、渋谷にはお世話になってきた。 その渋谷という街で、本屋が次々となくなっている… 2017年 ブック…

アガサ・クリスティー『オリエント急行の殺人』の感想文

アガサ・クリスティー『オリエント急行の殺人』 「一番好きな小説はなに?」 この質問は難しい。 本が好きだ、という人なら一度は聞かれたことがあるはず。 そして、何と答えたものかと、悩んだのではないだろうか。 好きな小説ならいくらでもある。 だが、…

米澤穂信『氷菓』の感想文

米澤穂信『氷菓』 「やらなくてもいいことなら、やらない。 やらなければいけないことは手短に」 をモットーとする「省エネ」高校生・折木奉太郎がなりゆきで日常の謎を解き明かしていく〈古典部〉シリーズ。 アニメ化もされた、この人気シリーズの第一巻を1…

安里アサト『86-エイティシックス-』の感想文

安里アサト『86-エイティシックス-』 今日は、普段とは毛色の異なる作品の感想です。 電撃文庫から刊行されている、いわゆるライトノベルに分類される作品です。 僕は、普段は一般的なエンタメ小説中心ですが、軽めの小説をサクッと読みたいときは、ライトノ…

趣味・書店巡り

外出中に、急に暇になったとき… 皆さんはどうやって時間をつぶしますか?? ゲームセンターやカラオケで軽く遊んだり、 ウィンドウショッピングしたり、 カフェで珈琲を飲みながらスマホを弄ってみたり… 自分は暇な時間ができると、すぐに本屋さんに吸い寄せ…

原田マハ『暗幕のゲルニカ』の感想文

原田マハ『暗幕のゲルニカ』 専門的な知識や経験に支えられたリアルな世界は、 時に、ただそれだけで娯楽として成り立つ。 『暗幕のゲルニカ』は、このことを示すよい例だろう。 海堂尊や知念実希人が書く医療を舞台にしたエンタメ作品には現役医師だからこ…

村田沙耶香『コンビニ人間』の読書感想文

村田沙耶香『コンビニ人間』 小説とは不思議なもので、ただ文字が並んでいるだけのはずなのに、 私たちの五感を絶え間なく刺激する。 私たちは、活字の群れから想像を膨らませる。 眼前に広がる美しい光景や、手に汗握るアクションシーンを目撃する。 ヒロイ…

読書感想文始めます。

はじめまして。 楓(かえで)です。 東京大学に通う読書好きな学生です。 小説を読んで、その時々に感じる様々な思い。 そうした感想を書き留めておきたいと感じてブログを始めました。 文芸について専門的に勉強しているわけではないので、小難しい理論なん…