東大文学部の読書感想文

東大文学部。好きな本や最近読んだ本の感想を書きます。ニュースや本屋で目にした、本にまつわる気になる事も。

今さら聞けない??そもそも、ライトノベルって何なのか解説します!!(前編)

上遠野浩平ブギーポップは笑わないという作品をご存じだろうか。

 

今年の1月からアニメが放送されるライトノベル作品だ。

このブギーポップ」シリーズの第一作が刊行されたのは1998年なので、もう20年も前になる。

20年前に始まったライトノベルの世界における古典ともいうべきこの作品が、このタイミングでアニメ化されることに驚いたが、単純に映像で「ブギーポップ」シリーズを楽しめることを喜んでもいる。

 

さて、今回は、ラノベ勃興期の人気作品がアニメ化されたこのタイミングを利用して

「そもそもライトノベルって何なの?」

ライトノベルっていつからあるの?」

というお話をしてみようと思う。

 

 ~目次~

 

 

 

f:id:arce9:20190111115428p:plain


 

 

ラノベの前任者?ジュブナイル小説の存在

まず、ライトノベルを語るうえで欠かせないのがジュブナイル小説の存在だ。

ジュブナイル小説というのは、ティーンエージャーを対象とした小説のことを意味するのだが、

最近あまり使われない表現なので、もはや死語となりつつあるのかもしれない。

 

少年少女をターゲットにした作品で、思春期や青春を感じられる場面設定とテーマで10代特有の成長や友情、恋愛、葛藤なんかが描かれる。

 

この作品がジュブナイル小説です!と明確に分類するのは非常に難しいのだが、

あえて代表作をあげるとしたら、なんといっても筒井康隆の『時をかける少女だろうか。

タイムトラベルを題材にしたジュブナイル小説の代表格だろう。

 

他にも、不思議の国のアリス『星の王子様』オズの魔法使い銀河鉄道の夜などがジュブナイル小説としてよく紹介される。

なんとなく、どういう作品群を指すのかお分かりいただけただろうか。

 

先ほど、ジュブナイル小説という言葉は死語かもしれないといったがそれは何故か。

理由は様々で、これと言い切ることはできないかもしれないが、僕個人の意見としては…

日本におけるティーンエージャー向けの小説というポジションが、

ジュブナイル小説からライトノベルへと受け継がれたからだ。

 

 

ライトノベルの誕生

ジュブナイル小説の後釜的存在として生まれたライトノベル

しかし、この「ライトノベル」という言葉がやっかいで、なかなか定義が難しい。

僕は、「表紙や文中の挿絵にアニメ調のイラストを採用した若者向けの娯楽小説」として捉えている。

 

ただ、イラストが無ければライトノベルじゃないのか?

と言われると、別にイラストは必須でもないような気がするし…

最近では10代にライトノベルを読み始めて、20代、30代になってもライトノベル読者であり続ける人も多いので、若者向けというのも絶対ではない。

また、ライトノベルは「キャラクター」が中心となって構成されると言われることもあるが、

物語の構造を語るとなると、キャラを基軸にする風潮はライトノベルに限定される話ではなく、一般エンタメ小説でも同様に思える。

 

ライトノベルを刊行するレーベルから出版されるのがライトノベルという何とも禅問答のような定義を目にすることも多いが、これも如何なものか。

 

結局は、作者と出版社と読者という作品に携わる各々が、

「これはライトノベルだ」と共通認識をしていればそれがライトノベルなのかもしれない。

 

 

f:id:arce9:20190111115503p:plain


 

 

ライトノベルジュブナイル小説の違い

ここまで解説してきたライトノベルジュブナイル小説

先ほど、

日本におけるティーンエージャー向けの小説というポジションが、

ジュブナイル小説からライトノベルへと受け継がれたからだ。

 と述べたが、ここで気をつけて欲しいポイントがある。

あくまで、ティーン向けという役割を継承したにすぎず、この両者は別物だということだ。

 

これまた完全な私見で申し訳ないのだが…

ジュブナイル小説は、【従来の小説をティーンに近づけたもの】だと考えている。

大人が読んでいた小説を、子どもように組み替えた結果がジュブナイル小説なのだ。

そのため、ジュブナイル小説には大人の抱く子どもへの理想像のようなものが組み込まれ、教化的な要素が含まれる。

娯楽であると同時にある種、教科書的な小説でもあるといえる。

 

一方でライトノベルは、【漫画やゲーム、アニメの世界を小説というメディアで表現したもの】だと考えている。

元々、ティーンエージャーが楽しんでいたエンタメを小説という方法で表現したライトノベルは、ジュブナイル小説的な「お利口さん」な部分が薄れている。

 

ジュブナイル小説という学校チックな枠組みを物足りなく感じ、そこから外れた場所に生まれたのがライトノベル

この点で、勃興期のライトノベル正しい意味でサブカルチャーだったといえる。

 

 

 

④前編のまとめ

ここまでの話を整理すると、

そもそもライトノベルとは何なのか?という疑問にお答えできていれば幸いです。

 

 

さて、後編では、

  • どのようなライトノベルが生まれたのか
  • ジャンルとして発展していったのか

といったあたりを解説する予定です。

書き終わり次第アップするので、続きをお楽しみに。