米澤穂信『氷菓』の感想文
「やらなくてもいいことなら、やらない。
やらなければいけないことは手短に」
をモットーとする「省エネ」高校生・折木奉太郎がなりゆきで日常の謎を解き明かしていく〈古典部〉シリーズ。
アニメ化もされた、この人気シリーズの第一巻を10年ぶりぐらいに読んでみた。
軽妙なタッチの古典部メンバーの会話や、高校を舞台に起こるちょっとした謎。
そして、作品の軸になる文化祭と古典部の文集「氷菓」にまつわる秘密。
『氷菓』本来の魅力は久方ぶりに読んでみても、少しも色あせてはいなかった。
ただ、この作品の刊行から経過した時間の膨大さには驚かされた。
この作中の高校生はラインやTwitterどころか、携帯電話も持っていない。
姉からは国際郵便で手紙が届き、同級生とは家電を使って連絡し待ち合わせをする。
学生を描く時のシチュエーションはとてつもなく変わってしまったんだと衝撃を受けた。
そして、主人公の「省エネ」主義だが、最近、「省エネ」という言葉もあまり聞かないなと…。
ちょっと前まで、家電製品なんかはいかに「省エネ」かが一番大事だとでもいうように大々的に謳い上げていたが、
最近では環境に配慮していることなんて当然の前提だからなのか「省エネ」というキャッチコピーを耳にする機会も減った気がする。
今、2018年に『氷菓』が初めて作られたとしたら、
奉太郎が自称する「省エネ」も違う言葉に置き換えられたのだろうか。
自分自身の成長史と照らし合わせて、10年前、20年前の作品を再読するという行為は何とも面白い。
- 作者: 米澤穂信,上杉久代,清水厚
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2001/10/28
- メディア: 文庫
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