ジェイン・オースティン『高慢と偏見』の感想文
正確には『自負と偏見』の感想文とすべきなのかもしれませんが…
ここでは、一般的に耳なじみの深い『高慢と偏見』の邦題を採用したいと思います。
『高慢と偏見』は、18世紀末~19世紀初頭のイギリスを舞台にした恋愛小説です。
場面設定の時代は古いし、イギリスを舞台としているし、
現代の日本人の読者にとって入り込みやすい物語とは言い難いお話です。
それに物語の展開も落ち着いていて、大きなイベントもほとんどなく進みます。
ただ、ひたすらベネット家の5姉妹を中心とした恋愛模様が語られるだけです。
正直、僕は恋愛小説が苦手です。
作品の一要素として、恋愛が重要な役割を果たす小説で好きな小説はいくらでもあります。
推理小説やら、青春小説やらの登場人物が恋をすることに不満はありません。
でも、恋愛が作品の軸で、ひたすら恋愛について語られる小説はあまり好んでは読みません。
恋愛経験がろくになくて、まだまだ恋愛小説の良さを理解できないお子様なのかもしれないですね…
でも、そんな僕ですら、
この大した出来事も起きないベネット家の恋愛事情には引き付けられるのです。
大学の翻訳論の授業内で本作が紹介されたその日に、
書店で購入し、そのまま読みふけり、日の出と共に読み終わりました。
『高慢と偏見』の最大の魅力は心理描写です。
オースティンの人物描写はそれぞれのキャラクターを効果的に深堀し、自分が昔のイギリスの片田舎でその人と会ったことがあるんじゃないかとまで思わせます。
そして彼らの心理は、オースティンの手によって鮮やかに描かれます。
そして、登場人物たちの様々な思惑が複雑に絡みあう展開は、凄まじい力をもっています。
地味な展開でありながら、読者の手指を支配して、次から次へと頁をめくっていきます。
そして、本作の主人公であるベネット家の二女エリザベスの恋愛が進むにつれ、
「高慢」と「偏見」の正体がわかります。
オースティンの繊細な筆致で描き出される人々の「高慢」と「偏見」とは何なのか。
ひとたびそれを知るまであなたの読書欲求は決して満たされないでしょう。