東大文学部の読書感想文

東大文学部。好きな本や最近読んだ本の感想を書きます。ニュースや本屋で目にした、本にまつわる気になる事も。

読書感想文

原田マハ『総理大臣の夫』の感想文

原田マハ『総理大臣の夫』 原田マハが『月刊ジェイ・ノベル』(実業之日本社)に連載した本作。 先日、彼女の『暗幕のゲルニカ』を読んだ数日後のこと。 (原田マハ『暗幕のゲルニカ』の感想文も時間があったら読んでみてください。) arce.hatenablog.com …

歌野晶午『そして名探偵は生まれた』

歌野晶午『そして名探偵は生まれた』 僕は、「歌野晶午」というペンネームが大好きです。 美しいペンネームランキングを作るとしたら、間違いなく上位に入ります。 ウタノショウゴという響き、そして字面、すべてが完璧。 自分自身で名乗りたいぐらいです。 …

ジェイン・オースティン『高慢と偏見』の感想文

ジェイン・オースティン『高慢と偏見』 自分は、小山太一さんの訳による新潮文庫版で読んので、 正確には『自負と偏見』の感想文とすべきなのかもしれませんが… ここでは、一般的に耳なじみの深い『高慢と偏見』の邦題を採用したいと思います。 『高慢と偏見…

アガサ・クリスティー『オリエント急行の殺人』の感想文

アガサ・クリスティー『オリエント急行の殺人』 「一番好きな小説はなに?」 この質問は難しい。 本が好きだ、という人なら一度は聞かれたことがあるはず。 そして、何と答えたものかと、悩んだのではないだろうか。 好きな小説ならいくらでもある。 だが、…

米澤穂信『氷菓』の感想文

米澤穂信『氷菓』 「やらなくてもいいことなら、やらない。 やらなければいけないことは手短に」 をモットーとする「省エネ」高校生・折木奉太郎がなりゆきで日常の謎を解き明かしていく〈古典部〉シリーズ。 アニメ化もされた、この人気シリーズの第一巻を1…

安里アサト『86-エイティシックス-』の感想文

安里アサト『86-エイティシックス-』 今日は、普段とは毛色の異なる作品の感想です。 電撃文庫から刊行されている、いわゆるライトノベルに分類される作品です。 僕は、普段は一般的なエンタメ小説中心ですが、軽めの小説をサクッと読みたいときは、ライトノ…

原田マハ『暗幕のゲルニカ』の感想文

原田マハ『暗幕のゲルニカ』 専門的な知識や経験に支えられたリアルな世界は、 時に、ただそれだけで娯楽として成り立つ。 『暗幕のゲルニカ』は、このことを示すよい例だろう。 海堂尊や知念実希人が書く医療を舞台にしたエンタメ作品には現役医師だからこ…

村田沙耶香『コンビニ人間』の読書感想文

村田沙耶香『コンビニ人間』 小説とは不思議なもので、ただ文字が並んでいるだけのはずなのに、 私たちの五感を絶え間なく刺激する。 私たちは、活字の群れから想像を膨らませる。 眼前に広がる美しい光景や、手に汗握るアクションシーンを目撃する。 ヒロイ…