東大文学部の読書感想文

東大文学部。好きな本や最近読んだ本の感想を書きます。ニュースや本屋で目にした、本にまつわる気になる事も。

松崎洋『走れ!T校バスケット部』の感想文

松崎洋走れ!T校バスケット部

 

 

いまさらだけど、僕は、が好き。

小説が好き。

でも、漫画も好きだし、アニメも、ドラマも、映画も好き。

 

要するに、物語の世界が大好きなんですよね。

フィクションを楽しむなかで、一番好きな媒体が小説ってだけ。

 

映画も好きなのだけど、最近あまり映画館に足を運ぶ機会がない。

公開中のボヘミアンラプソディー」が気になる。

いつまでやってるんだ??

「ファンタスティックビースト」の続編は絶対見たい。

いつからやってるんだ??

そう思って、久しぶりにネットで映画の情報を調べてみた。

 

ついでに他にどんな映画が人気なのかなぁと眺めていたら、

走れ!T校バスケット部という映画に目がとまった。

 

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このタイトル、めちゃくちゃ懐かしい!!

昔、読んだ!!

 

たしか、中学生の時だと思う。

けっこう前に読んだのに内容も意外に覚えている。

 

記憶を蘇らせながら、調べてみたら続編が10巻まで出ていた。

僕が読んだのは、2巻か3巻までだから、そんなに長寿シリーズとなっていたとは知らなくてかなり驚いた。

 

 

この、走れ!T校バスケット部、なかなかタイトルがダサい。

ド直球のタイトルで、theスポ根という雰囲気。

実際、そう。

だけどそれが良い。

 

超強豪校の1年生エース・田所陽一が、連戦連敗の弱小高校に転校してくる。

転校の原因はイジメ。

弱小校に移ってきた陽一はバスケを辞めるつもりだったが、色々あって再びコートに戻ってくる。

それが物語の始まり。

なかなかにコテコテのスポ根ストーリーだ。

 

 

ここだけ取り出すと、往年の名作『キャプテン』を思い出す。

かなり古い野球マンガなので、今の若い人は知らないかも…。

これも、超強豪校から弱小校に転校してくるという構図は同じ。

ただ、転校してきたのは実力不足で強豪チームでは試合に出るどころか雑用係だった落ちこぼれ

それなのに、転校先では凄い選手だと誤解されてキャプテンに選ばれてしまう。

事実と誤解のギャップに苦しみながらも、途轍もない努力で上達し、チームを引っ張る

本物のキャプテンへと成長するというストーリー。

これも面白いのでぜひ読んでみてほしい。

 

 

さて、話がそれたが本作走れ!T校バスケット部は、面白い。

弱小チームの面々も個性的で、作中のバスケの試合の描写もかなり質が高い。

緊迫感が読んでいて伝わってくる。

陽一やチームメイトの成長過程も読み応えがある。

 

青春小説とか、スポーツ小説、好きな人は絶対に楽しめる。

このあたりが好きな人ならハマること間違いなし。

 

 

そして、10代の少年少女が主役のスポーツ小説につきものなのが「大人」の存在。

部活の顧問や、それ以外の学校の先生、両親、外部からくるコーチ…。

こういった「大人」たちが、物語中で大きな存在感を持ってくる。

 

走れ!T校バスケット部は、中でも「大人」が良い味を出している。

元々いた強豪校の顧問、転校先の先生たち、そして父親。

それぞれ立場や関係性が違うから、主人公の陽一に投げかけてくれる言葉も様々だ。

子どものことを考えていないように思える勝ち負けに徹する嫌な「大人」もいれば、

楽しんでスポーツをすることを説く「大人」もいる。

 

これって現実世界でも同じですよね。

皆さんの、周りにいた「大人」はどんな人でしたか。

優しい言葉をかけてくれる先生もいたし、ちょっと突き放してくる父親もいた。

何も言わずお弁当を作って送り出してくれる母親や、大会に応援に来てくれた祖母もいた。

理不尽で嫌いだった顧問の先生もいたし、恐怖の象徴みたいな体育教師もいた。

20代になった今だと、彼ら「大人」も同じ人間だと分かるし、それぞれの立場とかも考慮できるようになってきた。

だけど、中高生の頃は、「大人」は別の生き物に見えた。

 

走れ!T校バスケット部の作中で、陽一たちを取り巻く「大人」たち。

青春を描くスポ根モノで脇役となりがちだが、なくてはならない存在だ。

是非、汗を流す主役の少年だけでなく、彼ら同様、悩み苦しむ人間であるはずの「大人」たちの存在にも目をやりながら読んでみてほしい。

 

 

走れ!T校バスケット部 (幻冬舎文庫)

走れ!T校バスケット部 (幻冬舎文庫)