佐藤義典『ドリルを売るなら穴を売れ』の感想文
佐藤義典『ドリルを売るなら穴を売れ』
ドリルを買う人が欲しいのは果たしてドリルなのか。
答えは、NO
もしかしたら、自宅に様々なドリルを並べて鑑賞するという世にも珍しい趣味の人もいるのかもしれない。
ただ、ドリル購入者の99%以上は、そのドリルで穴をあける。
ドリルじゃなくて、その穴が欲しい。
穴が欲しいから、ドリルが必要になって買う。
こんな感じで、マーケティングの超基礎を説明してくれるのが、今日紹介する『ドリルを売るなら穴を売れ』。
もう10年くらい前に発売された本書だが、今でもマーケティングを学ぶ多くの人にとって入口になる。
マーケティングとかに関わる若いビジネスパーソンとか、ビジネスを勉強したい学生とかがよく読んでいるイメージ。
実際に僕も、とあるWebサイトを運営している会社でインターンをしていた時に課題図書として渡された。
小説を中心に感想を書いているこのブログで、どうしてマーケティングの入門書なんて紹介するのか不思議に思う人もいるかもしれない。
マーケティング分野に興味がある人なら僕が紹介するまでもなく知っているだろうから、わざわざ取り上げるまでもないかもしれない。
ただ、僕は、
「普段の生活や仕事でマーケティングなんて関係ないよ!」
って人にこそ、この本を読んでほしい。
理由は2つ。
- 物凄くカンタンなことしか書かれていないから。
- この本を読むと実生活がめちゃくちゃ楽しくなるから。
まず、一つ目の理由。
この『ドリルを売るなら穴を売れ』という本には小難しい話は全然出てこない。
実際に自分で何かを購入するときに、何を考えていますか?
その時に自身の頭の中で起こっていることこそがマーケティングのメカニズムですよ。
というのが本書の主旨だ。
自分が買い手となるときのことを想定しながら、マーケティングを考えてみようという本。
だから、本書で取り扱う専門的な理論はかなり厳選されている。
- ベネフィット
- セグメンテーションとターゲティング
- 差別化
- 4P
本書で紹介されている理論は、この4つだけ。
4つだけなら、なんとかなりそうでしょう?
もしかすると、少なくてない?と不安になるレベルだけど、マーケティングの核の部分が取り出されているので、入門という段階ならこれで十分なのだろう。
そして、その4つの理論も小説仕立てのストーリーで、感覚的に理解できるように説明されている。
仕事をするうえでこの本に書かれていることを実践しろと言われたら難しい。
だけど、「マーケティングってこんなもんなんだな」と何となくの理解をするのなら容易い。
おそらく高校生とかが読んでも、全然ついていける。
そして二つ目の理由。
この本の内容がおぼろげにでも掴めると実生活が楽しくなる。
これは僕の体験に基づく感想だ。
先ほどインターンを“していた“という話をしたが、これ過去形ですよね。
そう。今はもうしていないんです。
だから、ぶっちゃけると今の僕の生活でマーケティングを意識する必要ってあまりない。
何かを売らなきゃ!
サイトのPV増やさなきゃ!
という状況ではない。
このブログのPV自体は増えてほしいけど…(笑)
ただ、身の回りには「マーケティング」が溢れている。
このブログサイトに表示される広告だってマーケティングだし、
毎日乗る電車のつり革広告も、Twitterに流れてくるプロモーションツイートもまた然り。
今日の昼間に書店で本を購入したときだって、近所のパン屋で朝ご飯を買ったときだってそうだ。
日常のあらゆる買い物の裏に、買わせようとした売り手の存在が見えてくる。
この製品を作った会社は、この理論、この考え方で、こんなパッケージにしたのかな。
なんて想像するといつもの買い物が楽しいものになる。
マーケティング理論を使う場面なんてない!
と思っているあなたにこそ読んでほしい。
あなたの生活がいかにマーケティングに囲まれているかが分かるはずだ。
同じ場所を歩いていても、見える景色が変わってくるかもしれない。