記憶を消して読み直したい小説
心の底から面白いと叫びたくなるような傑作に出会ったとき、
その小説を読んだ記憶を消し去って、
もう一度、まっさらな状態で読み直したい!
と思ったことはありませんか。
この先、これ以上の傑作に出会えるのかという不安。
そして、この小説を何度読み返そうと最初に感じた新鮮な喜びは二度と訪れないのかという絶望。
脳の中から記憶を抜き取り、傑作との出会いをもう一度味わいたいという渇望。
皆さんも覚えがあるのでは…??
当然、僕にもある。
今回は、僕が記憶を消して読み直したいとまで思う小説を3作紹介したい。
①歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』
なんでも屋の主人公が活躍するハードボイルド風味のミステリーだが、
物語終盤に謎が解き明かされたときのどんでん返しの美しさは唯一無二。
「あっと驚く最後」が持ち味のミステリーはたくさんある。
しかし、こうも流麗な結末を迎える小説を僕は他に知らない。
もし叶うなら、ぜひとも記憶を消して読み直したい小説の筆頭だ。
→歌野晶午の短編集『そして名探偵は生まれた』の感想文です。
併せて読んでみてください。
②湊かなえ『告白』
中学二年生の時に読んだ、湊かなえのデビュー作。
いわゆるイヤミスと呼ばれる本書を読み終わったときに抱いた、ドロドロとした仄暗い読後感に僕は酔いしれた。
何度読み返しても、その読後感は味わえる。
でも、最初の一回みたく、読後しばらく放心・陶酔してしまうほどの鮮烈さは二度とは堪能できないのだろう…。
③岡嶋二人『99%の誘拐』
刊行当時(30年前)のハイテク技術を使った鮮やかな誘拐劇。
臨場感と疾走感が魅力の本作は、展開のすべてを忘れてもう一度読んでみたい。
今回紹介した傑作たちの感想文もおいおい書いていけたらいいなと…。