安里アサト『86-エイティシックス-』の感想文
今日は、普段とは毛色の異なる作品の感想です。
電撃文庫から刊行されている、いわゆるライトノベルに分類される作品です。
僕は、普段は一般的なエンタメ小説中心ですが、軽めの小説をサクッと読みたいときは、ライトノベルに手を伸ばすこともしばしばあります。
高校時代には、『禁書目録』や『SAO』、『涼宮ハルヒ』などなど定番のシリーズはけっこう読みました。
この秋には両作品ともにアニメの続編が製作されており、久しぶりに深夜アニメを見たりもしています。
そして、最近のライトノベルの中でも特に面白かった作品が、
この、安里アサトさんの『86-エイティシックス-』です。
作品のあらすじを簡単に説明しますと…
「とある軍事帝国の作り出した無人兵器《レギオン》の侵略に抗う話」
です。
しかし戦うのは、人種の違い故に、
「人以下の存在」として定義された少年少女「86-エイティシックス」
無人兵器に侵攻されている共和国側は、
有人の無人兵器(人以下の86が搭乗しているが、彼らは人ではないため無人というロジック)で対抗します。
支配層は共和国中枢で平和を享受し、被支配層の少年少女を無理やり戦わせるという構図です。
本来兵士とは、故郷と家族や友人を守るために戦う。
しかし、支配層に無理やり戦わされる彼らには故郷も家族もない。
戦場が故郷で、戦友が家族。
生きる意味も戦う意味もすべてが戦場で完結する。
戦場にしか居場所のない少年少女が葛藤しながら、虐げられながら、それでも誇りを失わずに戦う。
この作品には、思考実験的にしか成り立たないファンタジーな極限状態の人間の感情が描かれています。
普段、ライトノベルと聞くと敬遠している人たちにこそぜひ読んでもらいたい一冊です。